「地球の静止する日」(1951年) 我々はその力を持っている

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マイケル・レニー主演の名作SF映画、2008年にキアヌ・リーヴス主演でリメイクもされましたが、そちらはなぜか「地球が静止する日」となっています。宇宙を舞台にド~ン!バ~ン!はありませんし、そもそも本作の宇宙人は敵ではなく、地球人よりも圧倒的に高度な文明を持った友好的異星人です。

ストーリー(ネタバレ込み)

国籍不明の未確認物体が時速6400メートルの速さで地球の周りを周回していることが確認され、世界中に報じられる。その飛行物体は昼間のアメリカ・ワシントンの公園に着陸し、警察・軍隊が宇宙船を囲みます。何の動きもなく2時間が経過したその時、宇宙船の扉が開き、中から人間の姿をした宇宙人が降り立ち「我々は平和と友好のためやって来た」と話します。他の惑星の生物データを地球への土産に持ってきたのですが、武器を取り出したと勘違いした一人の兵士が発砲してしまい、宇宙人は倒れ込み、さらに宇宙船から大きなロボット・ゴートが現れ公園はパニックに、目から光線を放ち、銃や戦車を簡単に溶かしてしまう。

撃たれた宇宙人・クラトゥを病院で手当てすることになり、4億キロの距離を5か月費やし地球にやって来たことや、「すべての地球人に関わることを伝えに来た。各国の首脳を集めてくれ」と要望しますが、東側諸国との緊張状態などを理由に不可能だと答えます。翌日「ワシントン以外では~、モスクワ開催~、」など様々な各国の反応にクラトゥはがっかりしますが「特定の国にだけ話すことはできない」と病院を抜け出し、地球人を観察することに。

「火星から来た男、逃亡!」と報じられますが、普通の地球人と同じ姿をしたクラトゥを見つけることはできません。彼は上着に付いてあったタグのカーペンターを名乗り宿に泊まることにし、そこで戦争で夫を亡くしたヘレンと息子のボビーと出会います。

翌日クラトゥはボビーとワシントンの街に出掛け、ボビーの父親が眠るアーリントン墓地へ。「国立墓地知らないの?」「遠い戦争がない所から来たんだ」午後に映画を見ようと話しますがクラトゥはお金を持ってないのでダイヤモンドとボビーの2ドルを交換します。リンカーンの「人民の人民による人民のための政治」という言葉を目にし「こんな人と話がしたい。今、一番偉大な人は誰?」「バーンハート教授かな」2人で宇宙船を身に行くことになり、そこでテレビの取材を受けます。「怖いのは理性を失い、ただ恐れること」

バーンハート教授に会いに来ましたが、留守だったため仕事場に入り込み、黒板に書かれた天体力学の数式を添削し、ヒントを与えます。帰って来てそれを見た教授は驚きクラトゥを探し出し、書斎へ招く。「それを使ってこの星へ来たんだ」というクラトゥの告白に教授は軍に報告せず、“科学の観点”から聞きたいこと山ほどあると言いますが、クラトゥは自身の“使命”の件を話し「地球人が原子力を発見したことは知っている、その兵器化は他の惑星の平和を脅かす。私は警告しに来たのだ、各国の代表を集めてくれ」教授は各国の科学者・有識者なら集められると告げます。「その提案を断ったら?」「代替案はない、その時はこの星が消える」言葉だけでは信じない人間も多いため、何か召集前に君に力を見せつけてくれないか、と頼むと、明後日の正午にその力を全世界に示すと約束し宿に戻るのでした。

クラトゥはボビーから懐中電灯を借りて夜の公園に向かい、怪しいと思ったボビーも後を付けます。懐中電灯の明かりでゴートに指示を出し、警備にあたっていた軍人2人を簡単に気絶させ宇宙船に乗り込むクラトゥを見てしまったボビーを慌てて家に帰りヘレンとヘレンの恋人・トムに話しますが、信じてもらえません。しかし、トムがクラトゥの部屋でダイヤを見つけヘレンとトムはクラトゥを怪しいと思うのでした。

約束の日、ヘレンの職場を訪れたクラトゥは2人でエレベーターに乗ったところ12時を迎えエレベーターは停止、クラトゥは教授や知識人に力を見せつけるため、病院や飛行中の飛行機など直接の被害が出るものを除いて、世界中の電力を30分間使えなくしたのでした。そしてヘレンにはエレベーター内で全てを告げ、理解を得ますが、ダイヤを鑑定し地球のものではないと突き止めたトムは「アイツを引き渡せば、僕は有名人だ」と軍にクラトゥの居場所を教えてしまいます。

政府はこれを地球人に対する攻撃だと思い、勢力をかけクラトゥ確保に動きます。タクシーで教授が開く会議に向かうクラトゥとヘレンを軍が見つけ、銃弾を浴びたクラトゥは路上に倒れ、ヘレンに宇宙船のゴートに向かい「クラトゥ・バラダ・ニクト」と言うよう伝えます。公園に到着したヘレンはゴートに呪文を唱えると、ゴートは彼女を抱きかかえ宇宙船内へ。ゴートは彼女を置いて外へ向かい、クラトゥの遺体を回収し再び宇宙船へ戻り、彼を一時的に蘇生させます。

多くの知識人を前にクラトゥは「私はここを去ります、いかなる侵略の脅威を容認できない。自由は保障されるが、無責任な行動は別だ。このような宇宙船で惑星を巡回し平和を維持している。宇宙に暴力を拡散すればこの星を消す。平和に暮らすか、今の道を行き滅亡するか、決断するのは諸君だ」クラトゥとゴートは宇宙船の乗り地球を去っていくのでした。

まとめ・考察

世界大戦直後に勝った側のアメリカが核兵器へのアンチテーゼを題材に映画を製作している時点で「やっぱアメリカ強ぇな…」と思わされる一作でした。ゴートの作りのおもちゃ感や、電力を止めたのになんで車も動かなくなる?などチープさもありましたが、目からビームが出たり、宇宙船の扉がスムーズに開く場面などは当時の観客は感心したことでしょう。ただ地球から火星が2億3000万キロ、木星が7億5000万キロの距離にあるらしく、この太陽系に異星人の姿は現在でも発見されておらず、ちょっと当時の読みは甘かったのかな?

またこの映画製作時点では想像していたかどうか…このクラトゥの理屈「原子力の兵器化をするな。どうなっても知らんぞ」がまさに“現代のアメリカ”だな、とも思いました。自分たちは核を持っているのにイランや北朝鮮には核の放棄を迫る姿がクラトゥと重なります。この映画のエンディング後、バーンハート教授をはじめ知識人や政治家の間でどういった議論が交わされたのか?「あんな恐ろしい奴らがいるなんて…更なる兵器開発を!」と唱える人も現れるのではないでしょうか? ヘレンやボビーの存在も何を意味していたのか、はっきりしません。

環境問題でしたが「ドラえもん 雲の王国」では愚かな地上世界の人間たちを大洪水で洗い流す“ノア計画”が天上世界で決議されます。最後は「地上人たちが環境について心を改めることに期待しましょう」と、この計画は実行されないのですが、ボビーと街を探索した、ヘレンと教授はクラトゥのために動いてくれたくらいなもので、本作ではそういった「地球人たちも捨てたもんじゃないな」の要素がありません。やはりアメリカは弱いものに興味はなく、ただ「オレ様に歯向かう力を持とうとするな」が本心ということなのか。

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