「ハート・ロッカー」(2008年)そして大好きだったものを忘れていく

movie

MIシリーズで見たことある方も多いジェレミー・レナー主演、イラク・バグダッドでのアメリカ軍爆弾処理班の活動を描いた戦争映画、ドキュメンタリーかと思わせる撮影手法で終始緊張感に包まれた一作で、低予算でありながらアカデミー賞6部門を受賞しジェレミー・レナーの出世作となりました。HeartではなくHurt Locker「棺桶」という意味だとか。

ストーリー(ネタバレあり)

イラク・バグダッドでアメリカ軍爆弾処理班(EOD)は路上に置かれた即席爆弾装置(IED)解体にロボットを使って処理していましたが、故障のためトンプソンが防爆スーツを着て解体に向かい起爆装置を取り付け離れたところEODのサンボーン軍曹が付近の店の店主が携帯電話を操作しているのを見つけますが間に合わず爆発、トンプソンは命を落としました。後任にアフガニスタンで任務実績があるウィリアム・ジェームズ軍曹がEOD班長に就きます。

ブラボー中隊任務明けまで38日、新たな依頼が入りジェームズはサンボーンとエルドリッジ技術兵の言うことに耳を貸さず自己流のやり方にこだわり防爆スーツを着て解体に向かいます。IEDに近づくジェームズに不審なタクシーが静止を無視し接近、ジェームズは銃を突きつけ追い払いタクシー運転手は小隊に取り押さえられます。地面に埋められたIEDは複数繋がっていて街の大部分が被害を受けるほどでしたが、ジェームズは全て解体し1本伸びたワイヤーを辿ると建物から1人の男が逃げていきました。無事解体に成功しましたが、目の前でトンプソンを失ったサンボーンは「もっと慎重に、チームで動け」とジェームズを批判するのでした。基地に戻ったジェームズはアメリカ兵士相手に粗悪DVDを売るサッカー好きのベッカム少年と出会います。

キャンプに戻り、戦争ものもテレビゲームで次々に敵を撃ち楽しんでいるエルドリッジに精神軍医ケンブリッジが声を掛けカウンセリング、エルドリッジはトンプソンの死のあと精神のバランスを崩していました。

翌日は国連施設に置かれた不審車にIEDが仕掛けられジェームズが近づいたところ建物の屋上から男が車に発砲し炎上、消火器で消し止めトランクに詰められた大量のIED解体を始めるのですが、「解体するしか助かる道はない、どうせ死ぬなら気持ちよく」と防爆スーツを脱ぎTシャツで処理に当たるのでした。サンボーンは周囲の建物を警戒し携帯電話を操作する男を見つけ危険を察しジェームズに「戻れ」と繰り返し指示しますが、ジェームズは無線を外し作業に徹し無事解体に成功しますが、再びの勝手な行動にサンボーンはジェームズを殴りつけます。様子を確認に来たリード大佐に聞かれます「いくつ爆弾を解体してきた?」「873発」「解体するうえで一番大切なことは?」「死なないことです」基地に戻ったジェームズにベッカムが話しかけ今度はサッカーをします。

任務明けまで23日、町から離れた地点で作業に当たり起爆装置を取り付け離れた後、ジェームズが「手袋を忘れた」と言い爆破ポイントまで歩いて戻って行くのを見てサンボーンはエルドリッジに「事故は起こる、報告書を書いて終わりだ」勝手な行動はチームの安全に関わると、ジェームズに対する殺意をのぞかせるのでした。砂漠地帯を走行しているとタイヤがパンクした不審な車が見えますが、複数のアメリカ人で民間軍事会社の人間で「アラブ人を2人拘束した、金で売り渡す」と言います。パンクを修理し談笑していると、軍事会社の男はどこからか撃たれ、急いで相手の姿を探すと850m離れた建物から狙撃されていました。援軍を要請しますが自力で何とかするしかない、サンボーンが狙撃ライフルを構えジェームズが指示を出しサポートします。弾薬がなくなりエルドリッジは死んだ男のポケットから探しますが、血がべったり付着し弾が詰まってしまうので唾でこすって落とすようジェームズが指示しますが、エルドリッジはパニックになり手元の作業が出来ませんでした。サンボーンによって相手狙撃犯を射殺、黒い山羊の群れに紛れ背後の橋から狙っていた狙撃犯もエルドリッジが撃ち危機を逃れます。日が沈む直前まで周囲を警戒しやっと基地へ戻ります。チームで戦った銃撃戦のあと3人は酒を飲みお互いの腹を殴り合うなど騒ぎ、身の上を話すまでに。ジェームズには離婚したが一緒に暮らす妻と子供がいて、サンボーンには子供を欲しがっている彼女がいること。ベッドの下にはこれまでにジェームズが解体してきた爆弾の部品“死にそうになった思い出”が集められていました。

任務明けまで16日、この日はエルドリッジを担当するケンブリッジも同行し、テロリストのアジトとして使われていた建物へ向かい、中にはIEDの部品などが散乱していました。さらに奥に進むとジェームズは血だらけになったDVD売りの少年ベッカムの遺体を見つけ、腹の中に爆弾を仕掛けられていました。サンボーン達はいつ爆発するかわからないので建物ごと早く爆破しよう、と提案しますがジェームズは譲らず自分の手で少年の爆弾を解体するのでした。アジト周辺の警戒・住民の避難に当たっていたケンブリッジは基地へ戻ろうとジェームズ達のもとへ歩き出した途端、道に落ちていた袋に仕掛けられた爆弾の爆発に巻き込まれ即死、目の前で信頼していたケンブリッジを亡くしたエルドリッジはパニックになり叫びながらケンブリッジを探すのでした。

人間爆弾にまでされたベッカムの死に怒るジェームズはベッカムとDVDを売っていた男を「テロ組織に攻撃場所を教えている」と掴みかかり、男を銃で脅しベッカムの家へ案内させますが、ベッカムの姿はなく男も逃げ出し、家にはベッカムを知らないというネビッド教授が「どうぞ座って」と勧めてくるが帰って来た奥さんに怒鳴られ家をあとにします。

ジェームズはイラク人の冷たい視線を浴び1人走って基地まで帰るのでした。出動要請が入る、タンクローリーの爆発があったとのこと、自爆テロの疑いもありましたが、ジェームズは遠隔操作によるものだと推測し「周囲を探す」といいますが、サンボーンは「それは歩兵小隊の仕事だ」と受け入れませんが、ベッカムとケンブリッジを続けて失い怒るジェームズは暗闇の市街地へ進み、サンボーンとエルドリッジは仕方なく同行します。エルドリッジの方から銃声が聞こえ2人で追跡するとエルドリッジは男2人に拉致される寸前、ジェームズとサンボーンは男たちを射殺、エルドリッジも重症を負っていました。

翌日、大腿骨9か所が砕け半年は歩けないという治療のためアメリカへ帰還するエルドリッジを見送りに行く途中で死んだはずのサッカーボールを持ったベッカム少年に話しかけられますが、ジェームズは彼を無視します。結局エルドリッジに散々罵られヘリは飛び立っていきました。

任務完了まで2日、体に爆弾を巻かれ街に置き去りにされたイラク人男性の対応に、サンボーンは「これは自爆テロ犯の芝居だ、射殺しよう」と提案しますが、ジェームズは防爆スーツを着て解体に向かいます。英語は通じませんが通訳を介し「家族がいるんだ、助けてくれ」と男性は繰り返し話しています。リミット式の爆弾でワイヤーは鋼鉄製カッターでは切れず焼き切るバーナーの準備も間に合わず、残り45秒ジェームズは作業を続けますが、1つの鍵は解除できただけ、残りの鍵の数は多くジェームズは諦め走って立ち去り、爆弾は爆発しジェームズも吹き飛ばされますが生きていた、ヘルメットを外し、空を見上げます。

帰国し家族との時間、スーパーで買い物をして一緒に料理をしたり、子供とおもちゃで遊んだり。妻には戦場での話をし、息子には「年を取ると好きだったものも特別じゃなくなる」「パパの歳になると残るは1つか2つ、パパは1つだけだ」そしてジェームズは再び戦場に戻る、防爆スーツをまとい次の爆弾へ向かうのでした。デルタ中隊任務明けまで365日

まとめ・感想

わかりやすい敵のボスがいるわけでもなく、一連の爆破テロが同一人物によるものかもわからず…かと言って「爆弾処理班の戦いを描く」と一言でまとめられるものでもなく…といった映画でした。ただの“ヒーロー”だけでなく爆弾を解体している時しか生きている実感を得られない兵士の現状も裏テーマにはあるかと思います。本国に帰っても笑顔はないし、3人で酒を飲んだ後もベッドで1人防爆スーツのヘルメットだけを被り落ち着いた様子であり、また冒頭の「戦闘での高揚感はときに激しい中毒となる、戦争は麻薬である」“クリス・ヘッジス”は狂った兵士を暗示した奥に“戦争好きのアメリカ”を非難しているようにも感じ

ました。ただラストシーンで新たな部隊で任務に向かうジェームズをカッコよく勇ましく映して、映画を終わらせたのは…「変人・英雄のどっちなの?」と迷う箇所ではありました。

ジェームズも勝手な行動ばかりとっていましたが、狙撃に狙われた時は自分より先にライフルを構え続けるサンボーンにパックのジュースを飲ませるなど仲間を気遣う面もあり、エルドリッジが大けがをして、ヘリで飛び立つ際の「もう砂漠はおさらばだ」と元気そうに叫ぶのを見て「彼が戦場で死ななくてよかった」と思っているようでした。ジェームズに撃たれたとは言ってないけど、たぶんジェームズの誤射なんでしょう

印象的だったのは爆弾を巻かれた男を助けられなかった後の帰り道「お前はよくやれるな、危険な賭けを」と戦場にいることを恐れるサンボーンに「…知るかよ、俺は何も考えてない」と何かカッコイイことを言えず、本当に何も考えてない“戦場が生きがい”を窺わせる会話ですし、戦場に立つ理由はどうあれ爆弾を解体しているのは地元の人たちのためでもあり、装甲車に地元の子供たちから石を投げられる場面は複雑でした。

ただベッカム少年は何だったのか?ジェームズの勘違いであの人間爆弾は別の子供だったということか?でもそんな勘違いから来る怒りのためにあんな尺取るか… ”ただの爆弾好き”ではない感情もちゃんとありますよ、を描きたかったということか。銃で脅した男に連れてってもらったネビッド教授の家も、ジェームズが騙されただけでベッカムの家ではなさそう…ベッカムの親にしては歳取ってるし、”教授”の家ならあんなDVD売りやってないはずだし。リスニング力が足りないのか「英語は?」「英語もアラビア語も」と返していますが、ネビッド教授は「English, French」って言っているような…

ジェームズの赴任最初の解体で不審なタクシーが突っ込んでくるけど、アメリカ軍が優しく追い返すわけがない(笑)現実は警告なしに「バンッ!」でしょ。なぜあの場面をキレイに表現したのかわからない。

コメント

タイトルとURLをコピーしました