2021年11月の読んだ・見た雑記 その2

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「トレイン・ミッション」(2018年)

人気作「フライトゲーム」のリーアム・ニーソンとジャウム・コレット=セラ監督のタッグで描く通勤電車でのノンストップ・サスペンスです。元警察官マイケルは10年勤めた保険会社を突如解雇され、家のローン・息子の大学費用に悩み、バーで昼間から酒を飲み警察時代の同僚マーフィーに相談しますが、結論は出ず。いつもの電車に乗り込みドアが閉まる時に携帯電話を盗まれていることに気が付きますが、ドアは閉まり電車は発射。座って読書をしているとジョアンナと名乗る女性に話しかけられ、人間の行動を研究しているという彼女はいくつか質問し「終点のコールドスプリング駅までに盗品を持っているプリンという人を探してカバンに発信機を付けてほしい、トイレに2万5000ドルある、成功したらさらに7万5000ドルあなたのものよ」と言い電車を降りていきました。お金欲しさにトイレに行ってみるとジョアンナの言った通り2万5000ドルがありますが、何百人もの乗客の中からプリンを見つけられる自信もなくお金だけ持って電車を降りようとしますが、子供に声を掛けられ渡された封筒には妻・カレンの結婚指輪が入っていてマイケルは“何か”に巻き込まれたことを察知するのでした。

いつも乗っている電車なので知り合いが何人かいて、トニーに電話を借り妻に電話しますが、繋がらずウォルトの持っていた新聞に「警察に通報してくれ」とメッセージを託されたウォルトは電車を降りますが、“ルール違反”としてウォルトは交差点で何者かに突き飛ばされバスに轢かれます。切符が7番で切られた乗客がコールドスプリングで降りることに注目しプリンを6人に絞り最初の男とは格闘になりますが、この男はFBI捜査官でこの後何者かに殺害されてしまいます。空調を壊し乗客を1車両に集め、マイケルはわざと大きな声で今回のおかしな事件を話始めたところ、ギターを持った黒人が1人別の車両へ、その男はプリンを殺すよう命じられていて、FBI捜査官を殺したのもこの黒人で、格闘の末窓から落とします。終点コールドスプリング目前というところで証券マンとの口論で席を変わった女性・ソフィアの読んでいた本「The Scarlet Letter」の主人公がヘスター・プリンであったことからソフィアがプリンであることを遂に突き止めた時ジョアンナから着信が入り「ソフィアを殺せ」と言われますが、拒否し「なら全員で死んで」と残し電話は切れます。

運転手が殺されブレーキが効かないよう細工がしてあり、何とか車両を切り離し、最後尾の乗客は無事でした。ソフィアに話を聞くと「自殺と見られている政府関係者・エンリケは警察に殺された。それは家にある。崇高な人間などいないと言っていた」とのこと。ソフィアは学生でいとこ・エンリケの事務所で殺害の目撃者であり、何かのデータが入ったUSBのようなものを持っているため命を狙われていたのでした。脱線した車両を警察が囲み“電車人質事件”の犯人マイケルを説得しますが、警察が絡んでいる以上素直に乗客特にソフィアを渡すわけにはいきません。かつての同僚マーフィーがマイケルを説得し何人かの乗客の代わりにマーフィーが人質になりますが、マイケルとの会話の中で「崇高な人間などいない」と発し全員がマーフィーがエンリケを殺したと確信します。マーフィーが銃で「プリンは誰だ」と脅しますが、乗客が次々に「私がプリンだ」と名乗り出てマーフィーを混乱させマイケルが掴みかかり、狙撃部隊の誤射防止のための発信機を奪ってマーフィーは狙撃されました。かつての上司・ホーソーンは「マーフィーの身辺調査を行っていたところだった。お前みたいな警察がかつてはいたな」と話し、事件は解決。後日電車内でジョアンナの前に警察バッジを持った“警察官マイケル”が現れたのでした。

走行中の電車内で繰り広げられるまさに“ノンストップ”な展開に満足の1本でした。が良く分からない点も…結局ソフィアが持っていたものは何なのか?ジョアンナも誰かに雇われているだけにすぎないようですが、それが汚職事件の黒幕なのかハッキリと描かれていません。マイケルはいつも同じ時間の電車に乗って帰っていたけど、日によって1本早いとか遅い電車に乗るとかあるだろ…今時車掌さんが切符切っていたのも気になりましたが、アメリカではあるのか?マイケルは常に見張られていたけど誰に?「プリンを見つけたのね、殺しなさい」「そんなことしない」「なら全員で死んで」の場面で運転手は誰に殺された?マイケルがソフィアを殺しても殺さなくても証拠隠滅のため脱線させてたのか?またソフィアが相談したというFBIガルシア捜査官は解決後車両でマイケルに「ご家族は無事です。3人逮捕しました」と言っていたので白です。ではそもそもなぜソフィアが狙われたのか?読んでた本の主人公が”プリン”でしたが、その情報は誰が流した?

「スナッチ」(2000年)

86カラットのダイヤを巡る“犯罪コメディ群像劇”です。裏社会の人間たちがダイヤを奪い合うので当然殺しもありますが、痛々しくなくむしろ“あっさり・サラッ”と描かれていて本人たちは真剣なんですが、どこかコメディを感じる楽しく見れる作品です。そして個性あふれる豪華俳優陣!!ブラッド・ピットベニチオ・デル・トロ、一応主演はジェイソンステイサムですが、珍しく弱いキャラクターでギャングのドンであるブリックトップに常に殺され“豚のエサ”になりそうな立場にあります。ストーリーというより登場人物が多いので覚えられず最初の30分は「誰の事言ってるの?」「誰が誰を追いかけてる?」など苦戦しますが、深く考えなくても映画自体は楽しめるので心配ありません。

というよりストーリーは大どんでん返し!!のようなものではなく、①ダイヤを売りさばこうとするが裏切られ横取りされ、②裏ボクシングの違法賭博のプロモーターがキャンピングカーとボクサーを失い新しいボクサーを見つける、この2つが交差するストーリーになりますが、この映画の魅力はオシャレ感・センスにあります。登場人物が多いのが共通点ですが「オーシャンズ11」のようなオシャレではなく、ミュージックビデオ的なカットが多く、冒頭の強盗シーンも監視カメラのモニターを1つずつ歩いて来て最後にその監視室に到着し「ダイヤはどこだ!」となりますし、ブラッド・ピットが裏ボクシングで殴られリングに倒れる瞬間水の中に落ちるシーンもMV的です。カジノ狂いのフランキーのNYのボス・アビーがロンドンに向かう飛行機も座席に付いてワイン?一口したら空港でポンっとスタンプを押され3秒でポンっとロンドンに到着するスピードも無駄がなく凝ってます。

当時のジェイソンステイサムもカッコイイですが、やはり放浪者集団のブラッド・ピットが圧倒的です。言葉のなまりが強く、服もヨレヨレでお金はありませんが、いつもニコニコでもボクシングは強い、美しい「ジョー・ブラックをよろしく」(1998年)と、危険「ファイトクラブ」(1999年)と、気品「オーシャンズ11」(2001年)の間の映画ですが、このブラピもファンの間では愛される作品だと感じました。

「殺人の追憶」(2003年)

民主化運動最中の1980年代後半に実際に韓国で起きた“華城連続殺人事件”をモチーフに監督ポン・ジュノ、主演ソン・ガンホの後に「パラサイト 半地下の家族」でアカデミー賞4冠を受賞するコンビで描いたサスペンス映画です。①雨の降る日に②赤い服を着た女性を狙い③FMラジオで「憂鬱な手紙」がリクエストされる④被害者が身に付けていた衣類で縛られ絞殺、などの共通点を持ち同一犯と見られているが警察は犯人を特定することが出来ず焦っていた。当時の警察の捜査は現場の保存も出来ず野次馬に踏み荒らされ、暴力的な取り調べによる自白頼りで、韓国国内ではDNA検査もできない質の低いものでした。映画ではラジオ局に曲をリクエストした“色白で柔らかい手”のパク・ヒョンギュを犯人として描きますが、アメリカでのDNA鑑定は“一致せず”で審議は不明、結局迷宮入り…時は流れ2003年警察を辞めたパク・トゥマンはごく普通のセールスマンとして働き、偶然通り掛かった最初の“田園地帯”事件現場に立ち寄り用水路を覗き込むが、そこには何もなし。女の子に「何してるの?この前も同じことしてる人がいた。自分がここでした事を思い出してたってさ。普通の人だった」と言われ映画は終わります。

華城連続殺人事件” は2019年に別の事件で服役していた囚人とDNA鑑定一致で“解決”ということになりましたが、映画公開の2003年時点では未解決事件であり、映画の最後の事件では雨は降っていましたが、“赤い服の女性”ではなく模倣犯の可能性もありさらに事件は難解になっているようでした。そしてラストシーンでカメラを見つめるソン・ガンホの「まだお前を忘れていないぞ」という“この映画を見ているかもしれない”犯人へのメッセージとも取れる終わり方でした。

ただ本作は事件に立ち向かう警察をヒーローとして描いているだけではありません。軽い知的障害のある焼肉屋の息子グァンホを“殴る蹴る吊るす”の酷い取り調べ、これを映画では軽く笑いを含めたブラックジョークとして挟み込んでいて、ポン・ジュノ監督自身80年代に民主化運動に参加していた経歴があります。ソウルから赴任して来て以来、これまで冷静に野蛮・質の低い捜査を冷たい目で見ていた“都会の刑事”ソ・テユンも自分がヒョンギュを見失った後で起こった最後の事件後(自分が保健室で絆創膏を貼ってあげた女の子?)に、犯人と決めつけたヒョンギュに対して「お前がやったんだろ!それでも人間か」と酷い暴行を振るいます。常に表情を変えず殴られ続けるヒョンギュと狂ったように殴り続けるソ刑事の対比が“人間を変えてしまう”印象的なシーンで、アメリカからのDNA不一致を知らせる報告書を見て、暗いトンネルの中へ逃げていくヒョンギュとそれを見つめるソ刑事とパク刑事は犯人が闇の中へ消えてしまった“真実は闇の中”を表しているようでした。

ただ「外国の未解決事件なんて知らんし」という方にはハッキリ犯人が明らかにならないこの映画は純粋に楽しめなかったと思います。連続殺人事件→いくつかの共通点→重要人物浮上→やっぱり違った……では「は?」としか思えないのも無理ないでしょう。「何これ、面白れぇ」を求める“面白い映画が見たい映画好き”に勧める作品ではないかもしれません。

小路幸也「駐在日記」

横浜で刑事をしていた簑島周平(30歳)と、ある事件で後遺症を負いメスを握れなくなった元外科医の妻・(32歳)が田舎村の神奈川県雉子宮駐在所に赴任して村の人々を温かく見守るハートフル短編集です。

1「日曜日の電話は、逃亡者」ある事情を抱えて村を訪れた若い2人の男女は…

2「水曜日の嵐は、窃盗犯」嵐の晩に寺の秘仏が無くなり…

3「金曜日の蛇は、愚か者」村に蛇が多く現れ“化け物”の噂も…

4「日曜日の釣りは、身元不明」釣り用具しか持っていない身元不明の中年男性の死体が…

と劇的なことは起きませんが常に村の人々のことを考え行動する駐在さんの物語を、花さんの日記に沿って進行し、語り主である花さんはどの出来事も優しく温かく寄り添います。その日の献立や村の住人から貰う野菜で季節の変化も鮮やかに描き、駐在所の図書室に遊びに来る小学生たち、元々住み着いて良くなつく猫3匹、などが簑島夫妻の人柄を表しています。ただ周平さんの元刑事らしく小さな変化も鋭く見逃さず、適切に迷いなく諭すところは以前の横浜での優れた仕事っぷりを伺わせるものです。また時代背景が昭和50年のものなので携帯やネットなどなく、蛇を掴む子供たちや住人同士の些細な助け合いも“ほのぼの懐かしさ”を演出している要素です。

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