白石かおる「誰もが僕に『探偵』をやらせたがる」どこから説明したらわかりやすいかな

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自分は認めてないけど「探偵の素質がある」とよく言われる、商社に勤める主人公がちょっと不思議な事件をあっさり解決してしまう短編集です。タイトルだけ見て調べずに選んでいるので読んでいる途中で「何のこと?」とわからない箇所があり……やはり前作があるシリーズ物でしたが、本作から読んでも人物像・ストーリーは追えたので楽しめました。①高層ビルが建てられる“前に”起きたとされる飛び降り自殺、②お互いの銃を交換して撃ち合い死んだ2人のヤクザ、③“犯行の瞬間だけ”目撃者のいない満員電車内での殺傷事件、④飲料水の“質が良すぎる”ため閉鎖されかねない取水プラント、⑤女スパイはどうやって捜査員に囲まれたホテルの部屋からブツを運び出したのか、の5つの謎を状況・証言・人物の何気ない行動から鋭くクールに推理してしまいます。また会社の女上司・冴草室長とのやり取りも「このくらいの謎、名探偵さんなら解けるでしょ」の変わらぬスタンスでテンポ感やキャラクターも魅力的で、いかにもドラマ化しそうな雰囲気を感じます。

ただ“自分も読みながら推理”するものではないかもしれません。あとから肝心な情報が出てきたりして、高層ビルで何が行われていたか、電車内の証言のどれかが嘘、など書かれている内容の“奥”を見破らなければならないと真相にたどり着けない章が多いからです。それでも人間業ではない「そりゃ無理だろ…」なタネはないので、純粋にどの章も謎説きを楽しめる内容になっています。ちなみに以前の「スクラップ・アンド・ビルド」に続いてまた京王線が登場しますが、京王新宿から調布までの間にあんなに色んな出来事が起き、過去のヤクザの話までするのは時間的に無理です。

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